銀座、といえばどんなイメージがありますか?
私個人の感想は、有体に言えば「おたかくとまってる」です。
実際銀座に足を運んだ経験と言えば、ジャンポールエヴァンだかピエールエルメだかのマカロンを食べに行ったときと、松坂屋にシルバニアファミリー展を見に行った時と、行方不明展を見に行った時くらいでしょうか。
(今調べたらエヴァンもエルメも銀座にはないので、記憶がどうにかおかしくなってる気がします)
と、まあ、私にとっては「足を運びづらい」街、銀座。
「東京ステッキガール」は、そんな銀座を舞台にした、おそらく架空の職業・ステッキガールたちの物語です。
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この漫画、どこで知ったかというとX(旧Twitter)のおすすめ欄からです。
どうですか?
このワンピース、帽子、バッグ。
めちゃくちゃかわいくないですか?!
このファッション、カラーになるとイエローにブラウンのドットとリボン、白い帽子に赤いリボン、赤いハイヒールにシーグリーンのようなぱっきりしたカラーのバッグ、と、見るファッション誌! 眺めるショーウィンドウ! みたいな気持ちになります。
ちなみに、本作に登場するほかのステッキガールさんたちもめちゃくちゃおしゃれです、
「100年前の地味女子」「レンタル彼女」そしてこの主人公の立ち姿。
結局ポストされたページを読み切ってから、その場の勢いで1巻を購入しました。
「東京ステッキガール」あらすじ
昭和初期、関東大震災からみごとな復興を遂げた銀座には、最尖端の職業婦人「ステッキガール」がいた。お客が「見たい、買いたい、食べたい」時、「ステッキ」となって客を導く女性である。名家のお嬢様のおもりとして働く女中のみちは、ある日、お嬢様を守るため、「ステッキガール」として路上で働き始めることに。だが銀座はスリルがいっぱいで!?
時は昭和初期。
関東大震災後復興を遂げた銀座。
そこで活躍する(?)主人公・みちの物語です。
そもそもステッキガールという単語、本当に耳なじみがなくてそれはなんぞや? と思ったのですが、この単行本の中でも実に丁寧に解説をしてくれています。
ちなみにこのステッキガール、先にも書いたのですがおそらく架空の職業です。
ステッキガール(和製英語:stick girl)は、昭和初年に大宅壮一が造語した表現で、男性の散歩に同行する女性を揶揄したもの[1]。特に、対価を受け取ってステッキ代りのように男性に同伴したり、話し相手をする者を「モダン職業ガール」の一つとしてこう称したが[2]、そのような職業が実在したか否かは当時から議論があった[1][3]。
Wikipedia 「ステッキガール」より
このあたりの経緯についても漫画のおまけで語られています。勉強になる!
先程の作者・伊田チヨ子先生のアカウントで紹介されていた通り、主人公のファッションがめちゃくちゃかわいい! と読み始めた漫画ですが、時代背景や当時の風俗も描かれていて、その辺りも興味深く面白い部分でした。
ちゃんとつらくて、でも明るい
「自由恋愛」「女性の一人歩き」「女性の短い髪」が蔑視の対象であったり、そのことで不利益を被るようなことがあった昭和初期。
兼松家の娘・葉子仕える女中さん(現代では差別用語として扱われる場合もあるようですが、作中に倣って)であったみちは、とある事件から兼松家を去らなければいけないことに。
とある、というのも「髪を短くしたから」というのが発端なのですが……。
時代というのはすさまじいなあと思います。
ミディアムヘアにしたくらいで家を追い出されるなんて……と現代の我々は思ってしまいそうですが、昭和初期では大事件だったんですね。
明治5年(1872年)には、「女子断髪禁止令」なんてものが出されたくらいですから。
さらに、意を決して身一つで奉公先を飛び出し、銀座の街でステッキガールになる決意をするのですが、その中でも様々な事件に巻き込まれていくのですが……。
そこに至るまでのお話・1話は無料で読めます!
「職業婦人」という言葉が生まれ、復興を遂げた街の中で、今までの考えを捨てて、銀座を飛び回るモダンガール・みちがこれからどんなふうに活躍していくのか。
この後の続きも気になる漫画でした。
余談ですが
ここからはちょっとネタバレありきで。
結納の後の宴席で断髪姿を披露し、葉子の結婚相手の妾にしようと目論んでいた相手方からの非難を受け、家を出るみち。
それを追いかけてきた葉子とのやり取りについて「時代だなあ……」と思った部分がありました。
まず宴席の場でみちを叱責する葉子の姑(になる人)からの罵倒も、「いやだってあんた関係ないやんけ」と思ってしまったんですが、嫁が連れてくるはずの女中が断髪女なんて! 息子の妾にふさわしくない!! という気持ちなのでしょう。時代だ。
そしてあれほどモダンガールにあこがれていた葉子の「なにかの事故です」という庇いだての言葉。
そのあとの「ずっと一緒にいたかったのに」という言葉。
葉子からしたら、婚家のお姑さんに嫌われてしまったら自分の生活も危うい。
でもみちは連れて行きたい、という気持ちから出た言葉が「なにかの事故」だったのかな。
若いながらも立派だな、とは思います。
女学生でありながらあのような場で自我を出さず、丸く収めようとする姿勢はすごい。なかなかできることじゃない。
けれど、職業婦人にあこがれ自由恋愛にあこがれ、みちにいろいろ語り聞かせていた葉子も、やっぱりこの「時代」の人間なのだなあ、と思います。
自身は尖端ガールにあこがれながらも、みちに対しては「ずっと一緒にいたかったのに」と嫁ぎ先でも自分の面倒を……と思っていた? と思っちゃう発言(うがちすぎかも)
でも時代に根付いた価値観って、変えるのはかなり難しいし、さらに声高に謳うのも恐ろしい。
たとえば戦時中に戦争を賛美したような、奴隷制度を当たり前に受け入れていたような、そんな時代に自分があったとしてその「おかしさ」に批判の声をあげられるだろうか、と思います。
絶対無理。だって怖いもん。
私はこの漫画において、尖端ガールだったのはみちであり、葉子ではなかったんだなあと思いました。
葉子もちゃんとお見合い相手の妻となり、平和に、そして平凡に暮らしているようで安心はしたのですが。
そんなちょっと考えさせられる部分もありつつ、モダンガールのおしゃれなファッションや文化風俗にも触れられて、1冊でたくさんおいしいおはなしでした。
2巻楽しみだな。
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