ずっと気にはなっていたんですが、2月のとある日、とうとう観ました。
- 監督:永江二朗
- 脚本:宮本武史
- 出演:恒松祐里、佐藤江梨子、本田望結、莉子
- 上映時間:82分
- 公開日:2022年06月03日
きさらぎ駅とは?
そもそも「きさらぎ駅」って、今の世代にどのくらい通じるんだろう?
「きさらぎ駅」は2004年、2ちゃんねる(当時)のオカルト超常現象板通称「オカ板」発祥の都市伝説です。
板ってなんやねん、2ちゃんねるってなんやねんNHKか、という世代もそろそろ出てきてるんじゃないかと思うとなかなか震えますね。
なのでタイトルの「洒落怖」は間違いです。正式名称「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」というスレッドに掲載されたものではなかったみたい。
ここで有名なのは「コトリバコ」「猿夢」「八尺様」などでしょうか。
ちなみに、「板」「スレ」についてはWikipediaをご確認ください。
で、「きさらぎ駅」の概要はといいますと。
きさらぎ駅の都市伝説がネット上で最初に語られたのは、2004年1月8日深夜のことである。始まりはインターネット掲示板・2ちゃんねるのオカルト超常現象板にあった実況形式スレッド[4]に怪奇体験の相談を「はすみ(葉純)」と名乗る女性とみられる人物が投稿したことであった。
2ちゃんねるのオカ板実況スレ「身のまわりで変なことが起こったら実況するスレ」のとある書き込みから始まるのがこの都市伝説「きさらぎ駅」です。
詳しくは実際読んでもらった方が面白いと思うので(「きさらぎ駅 洒落怖」などで検索するとまとめサイトが出てきます)、ここでは多くを語らないでおこうと思います。
今回見た映画は、この「きさらぎ駅」を題材にしたホラー映画なのです。ですが……。
映画「きさらぎ駅」の感想(ネタバレあり)
大学で民俗学を学ぶ堤春奈(恒松祐里)は、卒業論文で十数年来、ネットで現代版”神隠し”と話題になっている都市伝説「きさらぎ駅」を題材に取り上げることにした。リサーチの結果、「きさらぎ駅」の原点となった書き込みの投稿者『はすみ』ではないかとされる葉山純子(佐藤江梨子)という女性の存在を知る。ようやく純子への連絡先を知り、純子と会う約束を取り付ける。指定された場所は「きさらぎ駅」の舞台となった路線にある一軒家。部屋へ案内され、早速、ネットで噂される『はすみ』本人との真偽を確かめる春奈に対し、純子はどこか謎めいた笑いを浮かべる。続けて、純子から「きさらぎ駅」へたどり着いた経緯、その後の出来事などを聞く。純子と別れた春奈は自然に「きさらぎ駅」の舞台となった遠州鉄道の駅へ向かうが
(Amazon Primeページより引用)
わたくし、実はホラー耐性が人一倍低いです。
「犬鳴村 恐怖回避ばーじょん」ですら怖くてキレました。だってあれ全然回避しきれてねえもん。
回避するというなら全部伏せてほしかったもん。
みんなが「別に怖くない」って言った「残穢」でさえ途中から指の隙間から観たもの。
「貞子VS伽椰子」の廃屋のシーンとかむちゃくちゃ怖かったもの。
と、いう人間なので「きさらぎ駅」もしっかりばっちり怖かったです。
ジャンプスケア要素にいちいちビビらされました。
なんなら、はすみさん(佐藤江梨子)の回想シーンに出てくる超序盤のおじさんにすら声出してビビったもの。
(おじさんは出てきただけなので悪くない)
とはいえ、ホラー映画を好んでみるホラー猛者の皆様からすれば、こんなのホラーのうちにも入らないと思う。
上記のようなホラー耐性の人間が最後まで観られちゃうくらいだからそこは察してほしいです。
しかしこの映画の真骨頂は、ジャンプスケアでもホラー要素でもストーリーでもないと私は言いたいのです。
きさらぎ駅RTA(ここからネタバレあり)
前半ははすみさんの語るきさらぎ駅での体験。
ここからFPSゲームのような視点で映像が進んでいきます。
「きさらぎ駅」を知る人からすればもう、この前半部分から大変な違和感。
だってこの駅、そもそも原作(?)でははすみさんが「一人で」たどり着くことからストーリーが始まるんです。
そこを見た瞬間一瞬で脳を切り替えました。これは「きさらぎ駅」という概念をいったん取っ払わねばならない、と。
この判断は正解だったと思います。
もちろんはすみさんが一人ではないことに意味があります。教師である彼女は、「きさらぎ駅」で出会った勤務先の学校の女子生徒を、結果的に一人「きさらぎ駅」のある異世界へ置き去りにしてしまいます。
そしてはすみさんは、そのことをずっと後悔している。
卒論のためにはすみさんの体験談を取材しに彼女の元を訪れた主人公・春奈はここで、はすみさんが「きさらぎ駅」に迷い込んでしまった経緯と、その手順を知ることになります。
それで、ここからがすごかった。すごかった。
はすみさんが「きさらぎ駅」へ迷い込んだ方法を知った春奈は、同じ手順で自らも「きさらぎ駅」へ。
ここから彼女のきさらぎ駅脱出RTAが始まります。
ちがうんです。さも私が言い出したかのようなアレですが違うんです。
検索してみてください、「きさらぎ駅 脱出 RTA」で。
この感想を持っている方、本当に多いんです。
そして実際本当に、春奈が「きさらぎ駅」に迷い込んでからのRTAぶりがすごいんです。
以前、まんが牧さんのX(旧Twitter)アカウントで公開された漫画。
まさにこの世界観だと思っていただいて間違いないかと思います。
春奈は、はすみさんから聞いた体験談を元に様々な障害を素早い判断で撤去し、死亡フラグをぶち壊しながら「きさらぎ駅」の脱出を目指していきます。
マジでRTAなんですよこれ。
ちなみに、RTAの祭典として有名なものがこちら。
毎年様々な名言迷言珍プレイ好プレイが生まれるRTAの祭典です。
RTAで世界記録の更新でも目指してんのかってレベルで、春奈のさくさくプレイで後半は進んでいきます。
実は、きさらぎ駅に着いた際の顔ぶれは、はすみさんから聞いたメンバーと同じ。
ここで春奈は「きさらぎ駅はループしている……?」となるのですが。
きさらぎ駅がループしている??????
もうだめだ、この映画絶対面白いに違いない。
ループするきさらぎ駅ってなんやねん。やっぱりRTAじゃん。ゲームじゃん。
とりあえず頭はからっぽにするのが正しいと思いました。
ちなみに私の一番好きなシーンは、車で訪れる怪異のおじさん(何を言っているんだ)の登場に対し、春奈が
「この中に車を運転できる人はいますか?」
と春奈パーティ(きさらぎ駅にいたメンバーのことをこう呼んでいます)に問い掛けるシーン。
怪異じゃないおじさん(パーティメンバー)が「一応……」と運転できることを告げると、春奈はその辺に落ちていた凶器に手ごろな石を持ち上げ、躊躇なく怪異のおじさんの後頭部をぶん殴ります。
ダメだ、好きすぎる。
ここに至る前にも化け物となった(きさらぎ駅に分かりやすい化け物が出てくる理由はいったん置いといて)ヤンキー崩れみたいな人間も始末しているので、いくら怪異とはいえ春奈は2人の人間(人型怪異)を容赦なくぶっ飛ばしているわけです。
メンタルつええ。
やっぱ卒論で都市伝説を書く人間ってこのくらい強くないとダメなんだな。
異世界きさらぎ駅RTAで好き放題やっていた春奈も、最後には因果応報の形で報いを受けてしまうんですが、なぜそうなったのかはぜひ本編で確かめてください。
ただのきさらぎ駅RTAかと思ったら、最後はちゃんといやーなオチのミステリーでした。
監督は既に続編の構想を……?
実は「きさらぎ駅」、2025年の6月に続編の公開が予定されています。
どうするつもり??
続編予告では、「きさらぎ駅」のラストで描写された、電車の中で眠る春奈の姿が見られたんですが……
いや、あの子現世に戻すつもり?
はすみさんも相当悪かったけど、春奈もめちゃくちゃ悪かったぞ……どうすんだ……?
この「どうすんだ?」の気持ちから、続編「きさらぎ駅Re:」にも期待が高まっております。
もちろん、ホラー耐性がゼロの私は、逃げ場のない映画館ではなくサブスク配信まで正座して待機したいと思います。
なんか、私この監督のこと好きになってしまいそうです。
だって、「リゾートバイト」も面白かったし……(これもホラー耐性ゼロでも見られるホラーでした)
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