舞台「灼熱カバディ」と3日間

2024年2月26日

以前、noteにて公開していた記事に加筆修正を加えた内容となります。
当時は例の感染症がやや落ち着いたかな? まだ全然油断できないけど、といった風潮がありました。

それは2022年のお話でした。

最近、ずっといろんな人に「灼熱カバディ」という漫画の布教を試みている。

勿論、何らかの形で人の手によって生み出されたものなので、その人の琴線に触れるか触れないかは分からない。でも、触れる可能性がゼロではないなら、とりあえず一度読んでみてほしいな、と思うから。

最新話までは、アプリで待てば無料なんですよ、たまに何巻かまで無料なんですよ、スポーツ漫画好きですか? 男子高校生の一喜一憂が好きですか? じゃあおすすめです! みたいな形で。

成功率は五分五分、その中からハマりました! となるまではさらにちょっと成功率が落ちちゃう。

それでもいい、とりあえず、なんらかのきっかけでこの作品に触れる人が増えてくれたらな、と思うのです。

3話まではウェブで無料で読めちゃう。サムネ何事?って思うかもしれないけど。

アニメもいろんなストリーミングで見られる。
原作とは異なるストーリーを一期にまとめた内容になっていて、これはこれでまた面白い。


約1年ほど前ですが、QuizKnockの東問さんが灼熱カバディのTシャツで動画に登場していたことがありましたね。あれ、嬉しかったな。


で、そもそもカバディってなんなのさ。

私にとってのカバディとは、NTV系番組「Gの嵐!」内で松本潤さんが強く推していたスポーツ、という程度の認識だった。

「カバディカバディ言って走り回る」ということしか知らない、という点においては主人公の宵越竜哉と同程度の知識しかなかった。

まあ、有り体に言えばネタスポーツですよね? という感じで。

あれから(びっくりすることに)17年くらい経って、チャンスだ! と思えば相手構わずこの漫画を勧める中で返ってくる答えに驚かされることがある。

「敵陣行って相手にタッチして帰ってくるやつですよね?」
「あの、格闘技みたいなスポーツ」

17年ってすごい。認知度が上がっている。私、この漫画読むまでずっと「カバディカバディ言って走り回る」っていう認識しかなかったというのに。世界の進度が凄い。

今回の、舞台「灼熱カバディ」の部長・王城正人のセリフの中に「カバディが広がっていく日本で」というようなものがあったけれど、確かに間違いない。うん、広がっている。認知は確かに変わっている。

とはいえ、恐らく知らない人の方が多いだろうかと思う。

今回、この舞台を観に来たのは原作のファンと、そして役者さんたちのファンが多いだろうと思う。

原作ファンは(当たり前だけど)原作を読んでいるからどれだけ詳しくなくてもある程度のルールは把握しているけれど、役者さんのファンの方はどうだろうか。

原作ファンとしては観に来てくださることがとにかく嬉しい。でも、カバディのルールを知らない人が観て楽しめるのかな?

みたいな素人考えはプロの方々が始まる前に十分検討してくれているものだ。当たり前だけど。

とてもすんなりと、見ていて分かりやすく、「なるほどそういうことなのね!」と舞台を観る上で最低限分かりやすくルールの説明がなされていた。

大丈夫、これでカバディについては何をしているか分かってもらえる。
なんとなく、全員ついてこい、という意思を感じた。

舞台という生き物

私はライブも舞台も同じものを2回以上観たことがない。
強いて言うなら劇団「スプリングマン」の「弁当屋の四兄弟」という作品。

これについては3回観たと言っても期間は空いているし、毎回キャストも違うしシナリオも多少異なる。
だから本当に厳密に言うなら、同じ舞台を短期間で3回も観たのはこれが初めてだ。

それで、同じ脚本、同じキャスト、同じ演出の舞台を3度観て、23日マチネ、室谷大助役の平野泰新さんがカーテンコールの挨拶で仰られた言葉にひどく納得してしまう。

(本当にこの舞台を観るまで存じ上げなかった役者さんなのですが、身体能力が凄すぎて目の離せない役者さんだった。すごかった)

まあ、ちょっとうろ覚えなんだけど。

「守備(アンティ)は1匹の巨大な生物というセリフがありますが、この舞台こそが巨大な生き物だったと思う」

というようなコメントだった。

生き物だからこそ同じセリフひとつ、同じ演技ひとつとっても違うものに見えてしまう。

それは演者だけじゃない。見る角度、座席、体調、感情、経験など、観客のコンディションが違ってもまったく別の生き物になってしまう。

私自身、そこまで記憶力がいい方じゃないのだけれど、それでも3回分の差異は多少なりと覚えている。

その差を好む人もいれば嫌がる人もいる。きっと、観客席のすべての人間を100%納得させることなんて無理だろうけれど、それを限りなく100%に近づける生き物を作ることはできるんだろう、と思う。

少なくとも、それをやろうとしていた、と思った。

たとえば「スイミー」という絵本にある、たくさんの赤い魚で形作ったあの大きな魚のように。

違うのは、舞台にスイミーはいない。
すべての演者が、スタッフが、それを成す重要なパーツだ。黒い目などなくても、うねる大きな生き物になって観客を威嚇し、飲み込んでいく。

次を見据えた結末

20巻まで(※2022年2月28日現在)発刊されている原作を読んだ人間として、コミックスでいうところの3巻の半ばまでの物語、つまり主人公・宵越竜哉がネタスポーツと馬鹿にしていたカバディ部に入部し、後に宿敵となる奏和高校との練習試合を終えるまでの物語を本当に丁寧にそして余すところなく、2時間という少なすぎるように思える時間に凝縮されていたと思う。

宵越竜哉の内なる葛藤、王城正人の惜しみない愛、井浦慶の静かな激昂、畦道相馬の歓喜と悔恨、六弦歩の熱い憧憬、高谷煉の諦観と発奮。
ひとりひとりのキャラの「それまで」が周到に描かれていた。

もちろん、それだけじゃない。
まだまだ描かれていないものはいくらでもある。
伊達真司と水澄京平という水と油みたいな人間がカバディ部へ至るまでの道、木崎新太郎が抱える六弦や高谷、カバディへの思い、「仲良くなろう3人組」として登場した関隆太、人見祐希、伴伸賢(めちゃくちゃどうでもいいけど伴君の名前を見るたびに陶晴賢のことを思い出してしまう。全然詳しくないので名前以外のことは知らないけれど)のこれからの活躍。
描かれていないし、見たい場面はまだまだ山ほどある。
まだ登場していないキャラクターだって山ほどいる。そのどれもが15年~18年の人生を背負い、物語という舞台に上がる人間たちだ。

たぶん、きっと、恐らく。
現場でこの舞台を観た原作のファンであれば、「あの話も観たい」「あのキャラクターが出るところも観たい」と思ったんじゃないかな、と思う。
そういう「次」の夢を見せてくれるような、まだまだ余地のある展開だった。

役者さんや脚本について、感動した箇所やここが好き! と思った箇所はまだまだ山ほどある。

3回観てその全部にここが好き! という箇所があったのだから、もし次があったとして、また何度も同じ舞台に足を運んでも、その都度「ここが好き」という箇所を見つけられるんだろう。

なんて楽しいんだ。めっちゃ面白いじゃないですか。

これは本当に、2期、3期と続けて欲しい。そして私たち観客(そして高谷煉ファンクラブ)に次の世界を見せて欲しい。
その可能性は大いにある。ポテンシャルもある。
まだまだ足りない部分や欠けた部分があったのだとしても、これはやはり舞台という大きな生き物だ。
いくらでも大きく育つ。強くなる。
私はまた、次の機会にもこの大きくて恐ろしいばけものに飲み込まれてみたい。

余談。

役者さんが好きでこの舞台を観られた方にも、できればぜひ原作を読んで欲しいなあ……と思うのです。
あなたの推しの役者さん、まだまだこの先出番が山ほどありますよ? 漫画に人気が出れば2期が予定されて、その活躍をもっと観られるかもしれませんよ?
それは、今回出演されていたその役者さんについても間違いなく見せ場がある。みんなめちゃくちゃ泥臭くてめちゃくちゃかっこいい。

ちなみに、2024年1月現在26巻まで刊行中です!
こんなにテンションの高い、熱い漫画があるんだなあとしみじみ思います。

ファンの間では「13巻まで読んで」「177話まで読んで」などいろんな勧め方があるのですが、余力がある方はぜひマンガワンアプリで世界トレンド入りを果たした270話まで読んでください。なにとぞ。

観劇

Posted by nikee