畳の上に舞台がある『四畳半キルケット』感想

2024年2月26日

一生辿り着けないかと思った。

地図読むの苦手なんですよね。
今年二度目の新中野ワニズホールなんですが、今回何を思ったか前回とは違うルートを取ったんです。新中野からの方が近いって言うので。
それならそれできちんと下調べをしておけば良かったものを、3回入り口の前素通りしました。

それはさておき、『四畳半キルケット』です。

俳優・武藤啓太さんとの出会いはスプリングマン2011年公演の『ワンダーランド
当時は別の俳優さんを目当てに観に行ったのですが、この公演でコロっとやられまして。
その後しばらく観に行く機会が無かったのですが、今回5年ぶり?(だったと思います)の一人芝居と言うことで前のめり気味にチケットを確保したわけです。

それにしてもホールって装置のセッティングの仕方でこうも見方が変わるんですね。
ステージ周りいっぱいに敷き詰められた紙飛行機。
お手洗いにまで侵食していたのは思わずふふってなりました。

ここからは長くなりますので、箇条書き気味に。

オープニング

ノスタルジーに溢れた情景が目に浮かぶようでした。
サーカスの、ちかちかした光や歓声などが。
私サーカス行った事無いんですけど。
事前知識として短編、という事は知っていたので、このお話がどうまとまるんだろう?と思っていたのですが、これはなるほど、導入でありあらすじでもあるんだなという感じでした。

かめはめ波の話

原作未読勢にも優しい解説入り!
ドラゴンボールのゲームで遊んでいたらかめはめ波が撃てるようになってしまった男のお話。
男子、割とかめはめ波撃ちがちですよね、人に向けて。
人に向けて撃ったらこうなるんだよ!ということがわかってよかったです(?)
そう来たか?の笑いもあり、あっ、これはくるぞ…という笑いもあり、とんでもないドタバタコメディでした。
最終的に「そう来るの!?」というオチが付くんですが…ドラゴンボールなんていらなかったんだね…。

結婚式の話

私は、私が見た四編の中ではこれが一番好きなお話でした。
結婚式で新郎の親友が贈るスピーチ。
ですがその男は実はゲイで、それより何よりも過度の変態。
そんな彼が新郎に出会ってからのかなりヤバい片思いの歴史を語るのですが…。
これ、結婚式でやったら早々につまみ出されそうだな?と思ったらそれにもきちんと理由があり、一途な変態であるが故の悲しい片思いだったんだな…と最後にはしんみりしてしまいます。
いやでもそれはダメだろ!?
結局笑ってしまうのですが

DJムトゥー

武藤さん、ひどいく声がいい…と思ったお話。
超売れっ子ラジオのDJが、リスナーが「いや~じゃ」と思った悩みにお答えするコーナーなのですが、彼は「海は緑に見えるので見えたままを描きたい」と言ったリスナーに対し、「自分に嘘をついてはいけない」と答えます。
その後のお便り、「パンチラを見られるのが嫌だからスカートをはきたくない」という女性の悩みに答えるDJムトゥーのトークは過熱していき、「自分に嘘をついてはいけない」という自分の言葉を実行していくのですが…。
半分くらい「いやわかるけど」って思いながら聞いていましたが、謎の疾走感に負けました。
すごいの、流れるような性癖トーク。これ目の前でやられたら「お、おう」ってなるやつだ。
これを怒涛の勢いで語りつくす武藤さんも凄いのですが、この本を書いた三浦さんの感性も凄いと思いました。
神輿、担いでまうな。

幽霊の話

事故物件に住んでしまった貧乏学生と成仏しない幽霊のお話でした。
初めて出来た彼女がもうすぐうちに来るから成仏してくれ!と懇願する大学生に「成仏のしかた分かんないし~」とのんきな幽霊。
何とか成仏する方法を模索するうち、情が移ってしまった学生ですが…?
ほっこりする良い話だな、と思いました。前三編がテンポの良いギャグで、このお話もそういう展開だと思っていたのですが、最後はしんみりしっとりとしたまとまりで、この後のエピローグに綺麗に気持ちをもっていけたのだと思います。

長くなった。
とても長くなってしまった。

年に4本観れば多い方、大体年2~3本くらいの観劇が常の似非舞台愛好家なのですが、2018年はあかね色さんの『真説・春琴抄』に始まりクロジさんの『いと恋めやも』、そして『四畳半キルケット』で終わる年となりました。
見事なまでの三浦佑介さんイヤーとなった訳ですが(そういえば2017年のラストは『銀の国 金の歌』だったから2017年から続いている…)
来年も色々と舞台をなされるということだったので、今からもとても楽しみです。

そして武藤啓太さん。
最後に舞台で拝見したのが実に5年前の『弁当屋の四兄弟』だったのですが、相変わらずの安定した身につまされるお芝居でした。
私の大好きな三代目・桂春團治師匠はその真面目そうな見た目(実際はそんなこと無かったみたいですが)からは想像もできないくらいにアホの子供を演るのが得意な方でしたが、武藤さんも一芸に秀でているというか、どうしようもない男を演らせると右に出るものはいないのではないかと思います。決してご本人がそういう方と言っている訳ではありません
「こいつはムカつくヤツだ」という人間を演じるスタイルが確立されているのは本当に凄いな、と思います。

あとは音楽も大変良かったです。
全曲まとめてweb上で公開されておりました。
https://soundcloud.com/rare-beef/sets/punmp8hycc3a
演者が一人しかいないステージの上で、幕間を繋いだり演出を盛り上げる音楽もまた、演者の一員なのではないかということを強く感じたBGMでした。

長くなりすぎた上に主観ばかりの感想でしたが、2019年も武藤さんの舞台が楽しみだよ!というお話でした。
来年もステージにどっしり腰を据えて頑張ってほしいなと思う次第です。

ところで。
WordPressを迂闊に更新したらめちゃくちゃ編集がし辛くなっている。
元のUIになんとか戻したい…いや別に不便がある訳ではないんですが。